AI技術の成熟と教会を考える 〜30年後を見据えて〜

日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団/中央聖書神学校 能城一郎

1.はじめに技術の習得ありき
 「今は、IT技術を身に着ける時期。技術の暗黒面を模索する時ではない。」と提言したのは、第四回日本伝道会議(JCE4@沖縄2000)の分科会(インターネットの光と影)の席上である。今では、JEA、福音主義神学会、第六回日本伝道会議(JCE6@神戸2016)等の情報の電子化が精力的に行われ、教会がICT技術を巧みに利用してきている。COⅥD-19の中、ZOOMですぐに臨時神学委員会を開催することが出来た。これも、各人、関係団体のICT技術習得の積み重ねの結果である。
 この騒動がなければ、今年は5Gの導人でビックデータをはるかに凌ぐAl技術に依存する社会の扉が大きく開くはずであった。扉の先を垣間見るには数年かかるかもしれない。「30年後を見据えて」の副題は、ICT技術界では定説である二つの特異年による。(1)IT技術の大転換、2032年。(2)ネット情報の飽和期、2045年。2032年、聖書研究ソフトは、PCのOSに依存しないネットで動く、iC1oud化に移行する。2045年、ネットの情報が飽和する時期である(※2049年説もある)。人類が、経験したことのないAIとの共存世界に突人するのである。

 「永遠に立つ神のことば」を読みつつ、流動するICT技術習得に爽やかに適応することが、現代の教会に求められているのは確かなことであろう。

2.聖書を読むことの新スタイル
 2018年の春と秋、台湾で若者の聖書研究のスタイルを調査する機会があった。皆、スマホで聖書を読み、お証の時もスマホ画面を見ながら話をする。週報は、スマホでダウンロードである。圧巻だったのは、神学生が利用する聖書アプリである。無論無料である。(https://bible.fhl.net/)

 画像左上の新版をクリックするとクリエイターを武者震いさせるサイトが待ち構えている。筆者は、第七回日本伝道会議(JCE7@東海2023)のプロジェクト・リーダーを兼任している。2023年のフォーラムでは、このサイトを含めネット上の「聖書研究サイト」を調査し参加者と意見交換をしたいと願っている。過去の聖書研究サイトに関しては、『「聖書信仰」の成熟をめざして』(いのちのことば社、2017年、113-120頁)に紹介させて頂いたのでこれをお読みして頂ければ幸いである。

3.You Versionと技術
 この無料アプリを利用されている方はかなりおられることでしょう。ロ語訳、新共同訳聖書を無料で読み聖句検索もできる。さらに、アカウント登録をするとAI技術を利用して世界中で今、どの聖句が読まれているか等のAI技術ならではの情報の入手が可能である。2032年までに、JEA青年委員会、日本青年伝道会議(NSD)の提唱する「神の国マインド」の若きAI技術者の登場を祈るばかりである。(https://www.christianpress.jp/the-2nd-japan-youth-mission-conference/)


4.仮称。日本語聖書の訳語データベースの構築
 新改訳2017だけが利用する訳語を二つ紹介する。新約では、「神の公僕」、旧約では、「交わりのいけにえ」である。「公僕」の訳語は、ロマ書13章6節にのみ登場する。かつては、「神のしもべ」、「神に仕える者」と訳された箇所である。「交わりのいけにえ」は、85節あり、「和解のいけにえ」が、旧訳語である。『聖書協会共同訳』では、「会食のいけにえ」と改訳されている。聖書翻訳のライフ・サイクルは30年といわれる。30年後の聖書翻訳事業の備えとして、各翻訳聖書を構成する約3万節に含まれる「漢字文字列」を10分程度で抽出するAI プログラムの開発をしている。このことは、神学委員研修会ですでに報告済である。この構想は、今後、JCE7のプロジェクト・フォーラム等で紹介する予定である。

5.神学的特異年2054年(大シスマ千年)

 廣瀬薫師(JEA理事長)が、「一致・超教派・神の国」の講演の中で「大シスマ千年・2054年」に向けての神の<はたらき>に対する期待を熱く語られた(『舟の右側7月号』、2018年)。COⅥD-19の中、神の恵みの業の停止は決してない事は明らかである。2032年、2045年、そして、2054年と神の<はたらき>が世界中でより鮮明になってゆくことを願うものである。